アルゼンチンタンゴだけが人生ではない

もう随分と前になるが、アルゼンチンタンゴのダンスパーティー(ミロンガ)を主催していた。もちろんプロとしてではなく、会社勤めをしながらの主催だったが、素晴らしい仲間に恵まれ、幸運にもいつも盛況だった。

一方で辛いことも少しあった。ダンスの中でもアルゼンチンタンゴはマイナーな存在。社交ダンスはもちろん、フラメンコやフラダンス、サルサなどに比べても圧倒的にやっている人が少ない。

そんなの中、ぽっと出のアマチュアが主催するパーティーが盛況だと面白く思わない他の主催者もいる。「生意気だ」などと散々言われた。限られたパイ(この場合はタンゴを踊る人)の奪い合いの中で、新規参入者は目障りな存在だったに違いない。

しかし、真のライバルは本当に他のパーティーなのだろうか。

実際に参加する人の気持ちになれば、すぐに分かる。ダンスパーティーに行くよりも見たい映画やドラマがあればそっちを優先するだろうし、友人との会食に時間を使うかもしれない。スポーツや旅行など他の趣味の方が楽しければ、当然そちらに行く。

つまり、戦う相手は必ずしも他のダンスパーティーではない。それは単に目に付きやすいというだけで、実際は他の娯楽など、余暇の様々な過ごし方とその魅力を競い合っているのである。

目先の競合ばかりを意識した「限られたパイ」という考えを脱し、本当は誰と戦っているのかをもっと広い視点で捉え直すことで、まったく別の風景が見えてくる。