DJ新時代の幕開け

最初に断っておくと、私は自らがDJを務めるのが好きではない。楽しいと感じられないし、何よりも面倒くさい。そういう意味からも、DJの方々には常日頃から敬意を払っている次第である。

2010年に東京でミロンガ(アルゼンチンタンゴのダンスパーティー)の主催を始めた時、当初はDJを頼む人もなく、自らやるしかなかった。タンゴのCDを少しは持っていたが、DJとして毎週3時間をこなすにはまったく足らず、新たに数十万円をかけて100枚以上のCDを購入した。そしてそれをパソコンに取り込み、プレイリストを作成、膨大な費用と時間を費やした。

その時に思ったのが、「世界中のミロンガDJの人たちとタンゴの音源を共有できる仕組みがあればいいのに」だった。当時は、個人でお金をかけてCDやレコードを買いまくる、あるいは友人からタンゴ音楽を集めた圧縮音声ファイル「MP3」データを大量にコピーさせてもらうことが一般的だった。

それから10年近くが経った。

「タンゴ音源の共有」という当時思っていた理想は、今では北欧発の「Spotify」や、アマゾンの「Amazon Music Unlimited」などの音楽ストリーミングサービスを通じて実現しつつある。

たとえば、「Amazon Music Unlimited」の場合、全体で6500万曲以上をカバーし、ミロンガでの選曲の主体となるゴールデン・エイジ(黄金時代)の音源も豊富に揃っている。

音質的にも256ビット毎秒と問題のないレベルで、プレイリストも作成できる。アップルのメディアプレイヤー「iTunes」に比べると、音源の管理機能は見劣りするが、現状でも十分に活用可能なレベルにはある。そしてこの素晴らしい音源のストックを、月980円(税込)で好きなだけ活用できる。

これまでミロンガのDJは、時に音源自慢に陥りがちだったが、音楽共有サービスが充実する中、これからはタンダの構成や会場の雰囲気に合わせたライブ感のある選曲が、より重視される時代の到来を感じる。