年末年始にイランを旅して感じた、ある圧倒的な存在感

「かつては日本の人もたくさん来ていたけれど、最近はさっぱり」。年末年始にかけてイランを旅したが、旅行中に現地の人から何度も聞いた言葉だ。「その代わりに中国人がどんどん増えているよ」。

イランの首都・テヘランまでの空の旅は、途中で中国・上海とカタールのドーハに寄った。上海ではいったん入国する必要があったが、入国審査で目にしたのが、下の写真。自国民と外国人に分かれるのが一般的だが、上海の入国審査ではその中間に「一帯一路」専用のレーンが存在していた。

【上海の入国審査レーンには一帯一路専用があった】

一帯一路は中国が進める巨大な経済圏構想で、すでに世界で100カ国を超える国が参加している。入国審査の自国、一帯一路、外国の3分類を見て、中国はすでに世界をそのように理解しているのかと少なからず驚いた。一帯一路の構想が提唱されたのが、2014年11月。わずか5年の間に、その影響力は飛躍的に高まりつつある。イラン到着前のこの光景が今回の旅を暗示しているようであった。

世界的な旅行ガイドブック『ロンリープラネット』の最新のイラン版(17年9月発行)で、イランの古都・エスファハーンの地図には、地下鉄の存在はない。日本の旅行ガイドブック『地球の歩き方』の最新イラン版(16年12月発行)では、1号線が部分開通したとだけ書いてある。しかし、実際には2015年秋に1号線が開通、現在は3号線まで走っており、さらなる延伸計画も進んでいる。

【エスファハーンの地下鉄】

この驚くべきインフラ投資のスピードを資金と技術の両面から支援するのが、中国だ。一帯一路を通じて、イランとエネルギーや交通分野での協力を強化し、300㌔㍍にも及ぶ鉄道建設や地下鉄整備事業が動き出している。実際に、エスファハーンの地下鉄でも、中国製の車両や制御システムなどが全面的に導入されている。

【すでに3号線まで開通し、延伸計画(破線)も進む】

テヘランの街中でも、タワークレーンが林立し、大型ビルの開発が相次ぐ。制裁措置で経済が大打撃を受けていると日本では報道されているが、新しい建築が次々と生まれ、街の姿は日々変化し続けている。

【テヘランの街のあちこちでタワークレーンが目立つ】

テヘランやエスファハーンのホテルは、外国人客が少なく、閑散としている中で、中国人の宿泊客が目立った。エスファハーンで泊まった名門ホテル「アバーシ・ホテル」の受付には、イランの国旗の横に中国の国旗が並び、歓迎を示す言葉も、現地のペルシャ語、英語、そして中国語の3カ国で表記されており、中国人客の多さが伺える。

【イラン国旗の隣には中国旗が並ぶ】

テヘランでは、映画『アルゴ』の舞台にもなった旧米国大使館を使った「U.S.Den of Espionage Museum(米国諜報アジト博物館)」を訪れた。その来訪帳にも中国人の記帳が少なくなかったが、そこで繰り返し書かれていた単語が「平和」だった。一緒に米国と戦おうというよりも、世界の平和のために手を組んでいこうという内容。個人的には日本が太平洋戦争時に日本中心の東亜諸民族による共存共栄を掲げた「大東亜共栄圏」という単語を久しぶりに思い出した。

【旧米国大使館を使った米国諜報アジト博物館】

日本が果たせなかった野望を、一帯一路というさらにスケールを広げて思い描く中国。その行きつく先は。イランを旅して感じたのは、中国の圧倒的な存在感だった。